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記事詳細 178号 2011年12月20日 08面「特集:連載・ニュース」

開花直前の電子書籍市場 日の丸プラットフォームの挑戦 -第7回-

株式会社イーブックイ ニシアティブジャパン 代表取締役社長 小出 斉 氏イーブックイニシアティブジャパン

紙ベースの書籍では、今後、出版業界が直面するであろう課題を乗り越えることは難しい」。大量の返本が断裁・焼却される様子に危機感を覚え、鈴木雄介氏(現取締役会長)が株式会社イーブックイニシアティブジャパン(イーブック)を設立したのは2000年のこと。そして今年10月、東証マザーズ市場に上場を果たすまでに飛躍を遂げた。黎明期から電子書籍事業に携わってきた同社。成功の"鍵"とは――。

 


著作権者との"絆"を強みに新上場の老舗社が描く戦略

すべてが"逆風"からの出発
創業当時、電子書籍自体の知名度も低く、売上は伸び悩み、出資者に事業撤退を打診されたこともあったという。今でこそ「電子書籍の普及に向けた環境が整ったことが、成長の原動力だ」と小出斉社長は語るが、雌伏期の苦労の大きさは想像に難くない。

そうした中、注力してきたのが電子書籍事業の"肝"とも言えるコンテンツ拡充だ。もっとも"電子"は"紙"の競合と捉えられ「出版社に門前払いを受けることも少なくなかった」(小出社長)。対してイーブックは「一般書籍より電子化の許諾コストを抑えられるという事情もあった」(同)ことから、過去の名作コミック群に狙いを定める。ただ、出版社に相手にされない以上、作家に直接かけあい、粘り強く交渉を重ねるほか策はなかった。

5万冊の品揃え、毎月1000冊以上を継続追加中
漫画の品揃えに定評がある「ebookJapan」 http://www.ebookjapan.jp/ebj/近年は市場に新規参入が相次ぐものの、コンテンツ収集に苦労を強いられているプラットフォームも少なくない。イーブックの強みが、熱意の交渉によって築き上げた作家など「著作権者」との信頼関係だ。

01年に手塚プロダクションから電子化の許諾を獲得。これを機に、出版社の反応も徐々に軟化し、04年に講談社と、06年には小学館とも電子書籍での提携にこぎつける。今ではコンテンツ数は5万冊を超え、毎月1000冊以上を継続して追加。交渉要員に約50名いる社員の半数近くを割いていることからもコンテンツ拡充への力の入れようが見て取れる。

信頼を得るため、著作権者に配慮も払った。購入したコンテンツを複数端末で閲覧できれば、電子書籍の利便性を高められる。だが、作品のコピーに抵抗を示す作家も多いのも事実。そこで同社では、端末内の作品の削除が確認されるまで、別の端末にはダウンロードできない仕組みを「技術的には困難だったが、あえて取り入れた」(小出社長)という。

コスト削減のための"割り切り方"
イーブックが現在、電子書籍で利用するフォーマットは、本のスキャンデータを画像として扱うもの。「文字をOCR処理した場合には誤認識の修正作業が発生する。コストを抑えるためにも、コミックでは方法を変える予定はない」(同)。

一般書もテキストデータが版元から提供される新刊などはリフロー可能な方法での提供も視野に入れるが、絶版本などは画像方式で提供する考え。これも、長年の苦労の末にたどり着いた同社流の割り切り方だ。

09年、同社は次なる成長軌道を描くべく、創業者の鈴木氏から小出氏に経営のバトンが引き継がれた。小出社長の当面の目標は「コンテンツを100万冊まで拡充すること」だ。

(岡崎勝己)

 


 

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