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記事詳細 146号 2010年08月24日 10面「特集:インタビュー 」

IT×新ビジネス創造者 「アスク」創業者 三浦博史さん

選挙期間中の「ネット利用禁止」は時代錯
当選請負人が語る日本の選挙


日本初の総合選挙プランニング会社「アスク」創業者 三浦 博史さん日本初の総合選挙プランニング会社「アスク」創業者
三浦 博史さん


民主党の敗北で終わった7月の参議院議員選挙。有権者の清き一票を争い、表舞台で戦うのは候補者たちだが、その裏では「当選請負人」といわれる「選挙プランナー」たちの活躍もある。かつて、選挙の裏舞台で票集めに暗躍する「選挙ブローカー」や「選挙ゴロ」たちはあまり良いイメージは持たれなかった。しかし、それはもう過去の話。現在ではインターネットなど、先端技術を駆使して効率的に候補者の知名度・認識度を高めるPRプランニングが主流となっている。日本の選挙プランナーのさきがけ、三浦博史さんにネット選挙の最新事情を聞いた。

 

 


 表現一つで“ 事前運動” もOK

――インターネットの選挙利用について、日本での現状はどうなっているのでしょう?

日本では残念ながら選挙活動にインターネットを利用することは法律で規制されています。つまりやってはいけない。しかし、世界の趨勢は選挙活動におけるネット利用は、当たり前になっています。

日本の選挙を簡単に説明しますと、選挙期間は公示日または告示日から投票が行われる日までで、参議院選挙で17日間、衆議院選挙や政令指定都市の市長選挙が14日間など、選挙の種類によって異なります。この期間しか選挙活動はできない。それ以外の期間は政治活動としてOKということになります。ですからホームページなどの更新は、わずかな選挙期間以外はできるのです。

さて、公職選挙法には多少のマジックがあります。

例えば「今度の参議院選挙に立候補する三浦に、ぜひ投票してください」と言ったらバツ。けれどもマルといえないにしても、バツにならない言い方、グレーゾーンの表現というものは存在しています。要するに、選挙運動というのは選挙の種類と候補者を特定し、投票依頼をすることとされているので、裏を返せば、それ以外は何でもいいというわけです。

選挙の種類の特定とは、例えば参議院選挙前に「今度、参議院選挙に……」とやること。これを「国政に」とすれば、少なくとも衆議院なのか、参議院なのかであって、1つに特定したことにはならないからバツではない。

次に候補者の特定ですね。僕が立候補者だとすると「参議院選挙に立候補する三浦博史にぜひ1票を……」とやるとバツ。でも「国政に挑戦する三浦博史に」とすれば「三浦博史は参議院選挙に立候補する」という内容は含まれないから、バツではない。さらに「ぜひ1票を」ではなく「あたたかいご理解とご支援を」とやれば投票依頼をしていないからバツではないというわけです。

つなげて言うと「国政に挑戦する三浦博史に、皆様のあたたかいご理解とご支援をお願いします」。これがグレーゾーンの表現、別の言葉で言えば「OKとなる表現」なのです。

さて、現状では選挙期間中の立候補者個人のホームページやブログ、Twitterの更新はNGです。ところが、政党のホームページは更新を禁じられていはいません。今回の参院選では日本創新党を除く、すべての政党のホームページは選挙期間中も毎日更新されていました。党幹部の街宣日程などを毎日更新して知らせていたのです。政党の場合は選挙活動と政党の政策宣伝活動とを分けて活動できるのです。

グレーゾーン多い公選法「もう、笑うしかない解釈」

三浦さんの著書『ネット選挙革命』(PHP研究所)――そもそもなぜインターネットを選挙に利用してはいけないのでしょうか?

インターネットが普及するはるか以前に作られた古い法律に縛られているからです。

現行の公職選挙法では「頒布できる文書図画(ぶんしょとが)は法定ビラなど以外、ダメ」となっているのです。

これは、お金のある候補者はたくさんビラを作り、配ることができるが、お金のない候補者はそれができない、つまり選挙の公平さに欠くという発想に基づいていて、法律で配ってもいいですよ、と決められた文書しか配ることができないのです。

加えて、インターネットやケータイのメールマガジンも、この「文書図画」に該当するという理屈が通ってしまっているので選挙利用は不可、という判断になっています電話と異なり、プリントアウトできるから、というのが根拠なのですが、もう笑うしかありません。時代遅れも甚だしい解釈です。

――しかし、インターネットを選挙に利用していこうという動きもあると聞きますが
 
そうです。公職選挙法の改正は間近です。盛り上がったのが前回の総選挙の後ですね。民主党が圧勝して政権交代が成功した昨年夏の選挙です。ところが今回の参院選では本当にがっかりさせられました。なぜなら、政権交代前はインターネットを自由化しろと言い続けきた民主党が、衆院選で与党になった途端、突然慎重になってしまったのです。

政治とカネの問題とか消費税の問題とかをユーザに批判されるのが怖かったんでしょう。「なりすまし防止のためツイッターは自粛」とか、一歩も二歩も後退してしまいました。

――しかしインターネット上で「なりすまし」を完全にシャットアウトするなんてそもそも不可能だと思いますが・・・・・・

その通り、完全に防ぐことなどできるわけがありません。大切なことはどう対処するかということを考えることなのです。

例えばアメリカの場合は、なりすましだけじゃなく、その他の誹謗中傷などのサイトに対して、すぐに選挙管理委員会などが閉鎖命令を出せるようになっています。日本も選管と警察がちゃんと連携して迅速に対処すればいい。なりすましが予想されるから解禁しないというのは、時代錯誤も甚だしいといえます。

後援会主導から「ネット型」へ

――今後は日本国内でのネットの選挙利用はどのようになっていくでしょう?

講演や執筆などの仕事も多い三浦さん僕は商品流通になぞらえて無店舗販売・産地直売型選挙、つまり、今までの「後援会主導型」から「ネット型」に大きく変わっていくと言っています。

商品流通の場合、もちろん消費者にリスクがあります。注文通りのものが来ないとか、お金を払ったのに商品が届かないとか。でもそういうのは自然淘汰で消えていったわけです。

同じことが選挙の現場でも起こり得る。僕が衆議院選挙に出ようとした場合でも、1人で1000カ所近い掲示板に一枚一枚ポスターを貼っていられないですよね。そこで後援会が必要になる。それからさっきの法定ビラだって自分だけでは配りきれません。

ですから大きな選挙になると後援会がなければ何1つキャンペーン活動ができなかった。組織選挙といわれてきた由縁です。

ところがインターネットが完全に自由化されると、後援会頼みだった部分をインターネット上で十分補うことができるはずです。ブログやツイッター、メルマガなども含めてね。ポスターの掲示やビラ配りのボランティア募集も、動員も、理論上はネット上でできるわけです。

さらにコストもかからなくなります。例えば僕の後援会員が10万人とすると、10万人に対して1回DMする場合、1通の単価が100円として10万通だと何と1000万円かかります。50円のハガキを出してもハガキ代だけで500万円。ところがメルマガだとこれがゼロです。

 

◇◇◇


しかし、インターネットが普及することにより、立候補者としてのマイナス面もありえると三浦さんは言う。

画像や映像、音声のアップロードが容易なため、候補者は失言や失態にこれまで以上に気を遣う必要がある。ちょっとした失言、暴言を携帯などで撮影され、動画サイトに投稿されたら命取りになりかねないからだ。

このように、ネットの普及はいいことばかりではない。しかし、これもまた時代の趨勢なのかもしれない。

「だから家を出てから、家に帰り、自分の部屋に入るまで気を抜くな、と候補者にはアドバイスします」(三浦さん)

(末並俊司)

 

 


 アスク株式会社

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